あたしはまた必死でもがき始めた。


足をバタバタと動かして切られまいと必死になる。


「往生際が悪いな!」


陽介君がそう言い、あたしを握っていた手をパッと離したのだ。


その拍子にあたしの体は落下を始める。


真下には机。


高さはどのくらいあったっけ?


落ちたらあたし、どうなるの?


流れていく景色が何もかもスローモーションに見えて、現実的じゃなかった。


瓶や本に手を伸ばしてみるけれど、届かない。


あたしの体はそのまま真っ直ぐ落下して……ドンッという衝撃の後、目を開けた。


目の前にはジッとあたしを見ている陽介君。


あたしの下には陽介君の柔らかな手の平があった。


「どう? びっくりした?」


寸前のところであたしを助けた陽介君はそう聞いて、とても楽しそうに笑い出した。


その笑い声に恐怖が加速していくのを感じる、


遊んでるんだ……。


陽介君はもうあたしの事を人間だなんて思っていない。


ただのオモチャだと思っているんだ。