左足は正常だった。


でも、あるはずの右足がどこにもないのだ。


声にならない声で悲鳴を上げ、両手で口を覆った。


「起きたかい?」


そんな声が聞こえて視線を向けると、そこには陽介君がいた。


陽介君は嬉しそうな表情であたしを見ている。


「今度はセミの羽を付けてあげたんだよ。見てごらん」


陽介君はそう言うとあたしの前に鏡を置いた。


そこに写っていたのは、右足を切断されたあたしの姿だった。


「な……んで……」


「え? セミの羽もなかなか綺麗だろ? 今までの羽より小さいから、体への負担も少ない」


そんな事を説明している陽介君の声なんて、もうあたしの耳には届いていなかった。


どうして?


なんで?


そんな思いで自分の姿を見つめるしかできない。