陽介君はあたしを机の上に戻すと「仕方ないな。風邪薬を持って来てやるからな」と言い、部屋を出て行った。


その様子を唖然として見つめるあたし。


なにか、妙な風に勘違いされてしまったかもしれない。


例えば、あたしが陽介君を好きだとか……。


そう思うと背筋が寒くなった。


陽介君のことを好きになるなんてありえない。


だけど、そう勘違いしてくれていることであたしへの扱いが優しくなるかもしれない。


そんな期待が胸の中に産れた。


さっきだってすぐに風邪薬を取りに部屋を出て行った。


今まで風邪薬を準備するような素振りだってなかったのに。


このまま勘違いしてもらっていれば、もしかしたら助かるかもしれない。


あたしの為に陽介君が自分から動くのを待つのだ。


あたしの事を好きになってもらえれば、手荒な真似はしなくなるだろう。


そう考えていた時、陽介君が部屋に戻って来た。


その手には人形用のカップと風邪薬だった。