「おかげで羽が使い物にならなくなった」


陽介君の言葉にあたしはハッとした。


陽介君が怒っているのは逃げようとしたことと、せっかく付けた羽が汚れてしまったからだ。


「お前はここにいる事に不満がるようだけど、こんな綺麗な姿にしてもらえて、ただで食べ物を与えてもらえているのに、なにが不満なんだ?」


「そ……れは……」


ようやく声を絞り出したが、陽介君には聞こえないくらいの小さな声だった。


「なぁ? 答えろよ」


陽介君があたしに付けられた羽をつまんで持ち上げた。


皮膚が引っ張られ、ボンドがビリビリと剥がれていく感覚が走った。


水にぬれたせいで粘着力が弱くなっているのだ。


あたしは落とされないように必死に陽介君の指に掴まった。


「なんだよ、やっぱり嫌じゃないのか?」


少し驚いたようなその口調に、あたしは「えっ」と、顔を上げた。


あたしが陽介君の指を掴んだことで、なにか勘違いをさせてしまったようだ。