ミィが歩くとあたしの体は上下左右に大きく揺れた。


遊園地のジェットコースターよりもはるかにスリルのあるミィの背中にあたしは必死でしがみ付く。


机の端まで移動したミィはそのまま勢いよく床にジャンプした。


一瞬体がフワリと浮く。


それでもミィの首輪を掴み、どうにか振り落とされずにすんだ。


ミィはそのまま軽快な足取りで部屋を出ると、リズミカルに階段を下りた。


1階へ下りると「ミィ? どこにいるの?」と、陽介君のお母さんの声が聞こえて来た。


ミィを探しているようだが、ミィはそのまま玄関の下にある猫用の出入り口から外へ出た。


あれほど遠いと感じていた外が今はもう目の前にあった。


その現実が信じられなくて、あたしはしばらく放心状態になってしまった。


青々と茂った芝生。


その向こうに見える道路。


草や土の匂いを久しぶりに感じられた。


「外だ……」


ミィの背中に乗ったまま、あたしはそう呟いた。


「ミィ? どこにいったの?」


家の中からまた声が聞こえてきて、ミィはその場に身を縮めた。


あたしに降りろと言っているのだ。


あたしは久しぶりに土の上に下りた。


机の上よりもやわらかく、少し足が沈み込む。


靴を履いてきていないから、土の冷たさを直接感じられた。


それも、今は不快じゃない。


むしろ心地いいくらいだ。