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それから少し経った時、部屋のドアが開く音が聞こえてあたしは目を覚ました。


箱に入ってくる光はさっきまでと変わらない。


そんなに時間は経っていないようだ。


あたしは上半身を起こし、天井を見上げた。


足音は真っ直ぐこちらへと向かってきている。


「起きてるか?」


陽介君のそんな声が聞こえてきて、あたしはハッとした。


学校から帰って来たのだ。


「うん」


そう返事をする自分の声は熱でとても小さくなっていた。


天井を見ていると、ビニールの向こう側に陽介君の目が見えた。


その目に一瞬体が震えるのを感じた。


「昨日が学校に泊まりになったんだ。元気な生徒たちで残って、校舎の様子を確認してまわった」


陽介君はそう説明をしながらハサミを手にした。


ビニールの向こうに見えるハサミの刃に、あたしは咄嗟に部屋の隅へと逃げていた。


「このビニール部分は取っておくぞ。その方が箱の中に熱がこもらないだろ」


陽介君はそう言うと、ティッシュ箱のビニール部分を切り取りはじめた。


頭上で大きなハサミが動いている様子に、また身震いをした。