自宅

「憂依、おかえりなさい。お友達かしら?」
「ただいま。えぇ、お友達。家に帰っても誰もいらっしゃらないみたいだから連れて帰ってきたの。私の部屋にいるね。」
「そう。後でおやつ持っていきなさい。夕飯は...。」
「颯輝先輩?」
「一緒に食べていいなら。」
「分かったわ。食べて行きなさい。あとで呼ぶわね。」

お母さんに説明して、自室に行く。

「先輩、大丈夫ですか?」
「ごめんね、憂依。」

私にしがみついて泣き出した先輩。
急に呼び捨てになったから少し驚いた。

「私でよければ話聞きますよ。」
「ごめんね。」
「先輩が話したくなったら話してください。私はそれまでいくらでも待ちますから。」

彼のくせっ毛の柔らかい髪を撫でながらそう言う。

「憂依って、人の死を目の当たりにしたことある?」

私にしがみついたまま、小さな声でその言葉。

「ありますよ。私の友人が目の前で私をかばって交通事故で亡くなりました。小学校6年の頃です。」
「俺もさ、2年に上がる前に幼馴染のやつを交通事故で亡くしたんだ、目の前で。雪の日、スリップした車に轢かれて。」