図書館

「颯輝先輩、白木蓮の花言葉って知ってますか?」

ふと、聞いてみたくなった。

「ん?白木蓮の花言葉かー。知らないな。」
「高潔な心、慈悲なんですよ。」
「そうなん?憂依ちゃん、花言葉詳しいね。」
「家が花屋なので。」

数学の課題をやりながらそんな話をする。

「ねぇ、憂依ちゃん、これどうやんの?」

颯輝先輩も数学の課題をやっている。

「ここは、こうやるんだと思うんですが。教科書ありますか?」
「学校ー。持ってこなかった。」

子供が親にいたずらがバレた時の様な笑顔で答えた。

「颯輝先輩...。」
「ごめんー、明日持ってくるから。この課題明後日までだから。」
「分かりました。そろそろ帰りましょう?雨、強くなってます。」

外を見ると雨がすごい勢いで降っていた。

「ホントだ。憂依ちゃん、送っていくよ。」
「大丈夫ですよ。」
「いいからさ。」

ほぼ強制的に先輩と帰ることになった。
時々見える彼の横顔は何故か寂しそうで哀しそうな表情をしている。

「せん「憂依ちゃん。」」

私が口を開いた瞬間、颯輝先輩が私の言葉を遮った。

「何ですか?」
「泣いてもいい?」
「え?構いませんが、誰かに見られちゃいますよ。うちに来ますか?」
「行ってもいいの?」
「構いませんよ。行きましょ?もう少しですから。」

この言葉を聞いて、彼にも私と同じように何かがあると感じた。
彼が手を出してきたので私は彼の手に自分の手を重ねた。