花言葉 〜大好き〜

4時間目

「ねぇ、憂依ちゃんってさ、1年何組?」

唐突に来る質問。

「1組ですよ。どうしてですか?」
「勉強教えてもらうのに迎えに行けないでしょ?組知らないと。」
「そういう事ですか。勉強やる気になってくれました?」
「やりたくはないけど、やれば先生も文句言わないし、憂依ちゃんも一緒にいてくれるし。」

恥ずかしいことをよく平気で言える人。
そんな風に話していると3組の教室が見えてきた。

「教室やだなぁ。」
「だから、3時間目、白木蓮の木の下で本を読んでいたんですか?」

ずっと疑問だったことを聞いてみた。

「見てたの?」
「中庭、クラスから見えますから。」
「あー、あの視線、憂依ちゃんだったんだー。俺、本を読むのは好きだからさ。放課後もよくあそこで本読んでるんだ。」

本を読むのは好きなら勉強も同じようにやればいいのに。それを口にしたら何故かこの砕けた感じで接してくれなさそうだから口にはしなかった。彼の場合、そのふとした言葉で心を閉ざしそうだから。そんなデリケートな雰囲気もある。

「そうなんですか。今日の放課後、中庭に行こうと思ってたんですよ。先生に呼ばれなくても、そこであってたかも知れませんね。ほら、教室着きましたよ。数学頑張ってください。あと2時間も。」
「はーい、憂依ちゃんが言うから頑張るわ。放課後、中庭でねー。」

軽く手を振りながら中に入っていく先輩。中に入ったのを確認して私も急いで音楽室へ向かう。


「先生、すみません。原野先生に呼ばれて、遅れました。」
「夏木さんに聞いてたから大丈夫よ。席について?」
「はい。」

席に着くと、私の席には音楽の道具が綺麗に置かれていた。隣では蓮音が気持ちよさそうに眠ってた。

「蓮音、蓮音、起きてください。」

優しく揺さぶると目を覚まし、私のことが目に入ると、嬉しそうに笑った。

「おかえりー。何だったの?原野先生の話って。」
「授業が終わったら話しますから。今は授業中ですよ。」
「はーい。」

残り20分ほどの授業でだいたい今日やったことは分かった。ノートは蓮音に見せてもらおうかと思ったが寝ていたので前に座るクラスメイトに見せてもらうことにした。

チャイムがなって、授業が終わると、蓮音は私の手を引いて急いで教室に戻る。

「蓮音?」
「さっきの話聞かせて?ほかの人に聞かれたくないと思ってさ。」
「有難うございます。栗梨先輩に勉強教えてあげることになっただけですよ。」
「栗梨って数学の時間中庭にいた先輩?どうして授業中中庭にいたのか聞いた?」
「えぇ、教室がお好きではないみたいで。」

次の古典の準備をしながら彼女にさっきあったことを話す。

「へぇー。そんな事があったんだ。でも、先輩と近づける口実になるじゃん。」
「え?近づく必要ってあるのかわからないですが…。」
「まぁいいじゃん、頑張りな。」
「えぇ、有難うございます。」

いつの間にかほかの生徒も教室に帰ってきて、授業まで、残り3分になっていた。
颯輝先輩のことを考えて、中にを見ると白木蓮の木の下で本を読んでる彼が目に入った。彼を見ているとチャイムがなって授業が始まった。