「憂依のお母さんってお花の匂いがするね。」

登校中、先輩が口を開いた。

「お花屋さんですから。お父さんは私が小さい頃に亡くなりましたから。」
「そうなんだ。」

ここでお父さんの話を出さない方が良かったかも。先輩が俯き加減で言った。

「ねぇ、憂依。明日の花火の時さ、中庭に来てよ。」

栖鳳では、後夜祭で花火を上げる。その上、全校生徒に手持ち花火が配られそれをやる。今日は中夜祭。明日の一般公開の最終準備をして、午後は体育館で色々なステージを見る。

「良いですよ。」
「約束ね。教室まで送るよ。」
「約束、指切りしますか?」
「うん!指切りげんまん・・・。」
「あっ、蓮音。」

目の前に蓮音が歩いているのを見つけて声をかける。颯輝先輩はそんな私をのほほんと見てる。

「憂依!おっはぁ~。ん?誰?」
「颯輝先輩。この前話したでしょ?勉強教えてるって。」
「あー、彼が。私、夏木 蓮音って言います、よろしくおねがいしまーす。」
「栗梨 颯輝。宜しくね〜。」

ほんわかな雰囲気の彼。この雰囲気の彼が一番好き。

「憂依、蓮音ちゃん、教室まで送るね。」
「「有難うございます。」」

蓮音を加え3人でいろんな話をした。蓮音のこと、私のこと、先輩のこと。
そんなことを話してるうちに教室に到着。

「先輩有難うございました。また午後。」

以前から中夜祭の午後は一緒にステージを見ようと約束してた。

「うん!じゃーね〜。」

手を振りながら走り去ってく先輩。彼が見えなくなったのを確認して教室の中に入る。

「憂依、先輩のこと好きでしょ。」
「そ、そんなことは...。」
「ふふ、否定しなくていいんだよ。まぁ、午後はウチ、海恋と見るから。」

そう言って海恋ちゃんの所に行く蓮音。
蓮音には分かるんだろうな。明日の花火の時、ちゃんと気持ちを伝えよう。