皆は何を渡すのかな。授業中、頬杖をつきながら考えた。


私は昨日山崎くんと話してから、なんだか吹っ切れた気分だった。昨日の帰り、ラッピングも悩みに悩んで選んだ。作るものも決めた。


それは、クッキーだ。甘いものが苦手な人でも、極度に甘く無ければ食べられると考えての結論。


うまく作れるか心配だけど…きちんとレシピ通りに作れば大丈夫だよね。


そう思いながら、教科書の隅にクッキーを描いてみた。


手を止めて、目線を上げる。その先には山崎くんがいる。彼はどうやら睡魔と戦っているらしい。右手にペンを持ったまま頭をぐらぐらさせている。


そんな姿さえ愛しい。自然と笑みがこぼれた。


…ダメだ。伝えようと心に決めたら、タガが外れてしまったのかもしれない。彼への気持ちがどんどん増幅して、一刻も早くこの気持ちを伝えたくなる。


バレンタインが来る前にもう一度彼と対面したら、うっかり口を滑らせてしまいそうだ。


ダメダメ。それだけは絶対に避けなきゃ。バレンタインの前に告白して振られるなんてシャレにならないもん。買ってきたクッキーの材料はどうなるの。頑張って選んだラッピングもどうするの。


そんな事を思いながら、私は再び授業に集中した。