下駄箱でいきなり泣き出したため、周囲の人たちも何事かと集まり出した。
「ふ、楓子!ちょっと場所移動しよっか!」
そう言って麻衣は私の腕を引っ張っていった。
着いた場所は生徒玄関から少し離れている体育館裏のベンチだった。
私と麻衣はそこに腰掛けて、麻衣は私が泣き止むのを待った。私はポケットからハンカチを取り出し、目頭を抑えて涙が止まるのを待った。
それから数分、私の涙も落ち着いてきた所で麻衣は口を開いた。
「もう二月って、信じられないよね」
空を見上げて話す麻衣に、私はクエスチョンマークを浮かべた。麻衣が何を言おうとしたのか分からないからだ。
「四月に私達同じクラスになってさ、体育祭して、文化祭して、課外授業行って…あっ、喧嘩もした。思い返したら、ホントに色んな事あったよね」
「…うん」
私は彼女の雰囲気に流されて頷いた。
「一緒に過ごして十ヶ月。もうお互いをよく知った気持ちだけど、ホントは私達全然知らないんだよね」
彼女はこっちを向いて笑った。
「だから、話して欲しいんだ。楓子の事。私も話すから」
力強くて、だけど優しい目だった。そんな麻衣の表情に、止まったはずの涙がまた私の頬を伝った。
「…うん。私も、ホントはずっと話したかった」