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「…技術棟って初めて入ったけどさ…なんか…」
「言いたいことは分かるよ…」
なんて言うか、荒れてる。
私たちの高校は普通科、農園科、商業科、工業科、家政科と5つの学科に分かれている。その中で工業科はほぼ男子しかいない。
工業科が使うこの棟に男子しかいないとなれば、この汚れた床もダンボールでところどころ塞がれている窓も、まあ、分からないでもない。
「とりあえず、実習室に行こうか。」
「そうだね…教室よりかは隠れるところがありそうだし。」
馬渕くんと話しながら慎重に移動する。
他のみんなは私たちに任せるというスタンスのようだ。
私たちの高校は基本、1階が3年の教室、2階が2年、3階が1年の教室があり、だいたいは1階から繋がるところに実習室の類があるのだ。
1階にいれば逃げ道は増える。
「うわっ、実習室ってほんとに工場みたいなんだ」
「実際、工場でするようなことを学ぶからな。…たぶん」
「たぶんなんやな」
男子たちはだいぶ余裕を取り戻したみたいだ。
それだけでも、こっちの緊張もほぐれるからありがたい。
―――ガララッ
「―――っ!!」
遠くで教室のドアを開く音がした。
―――ガラッ
…何かを探してる…?
「まさか…葛西くんなの…?」
「落ち着け、声を出すな。音も立てちゃだめだ。」
今の葛西くんに見つかれば、確実に殺される。
私たちは実習服の掛けてあるところまで移動し、服の陰に隠れた。
ガララッ
誰かが入ってきた。
できれば入ってこないで、そのままどこかに行って…と願ったけれど、足音は中に入ってきた。
人影は台の下を覗いたりして、徐々に私たちのいるところに近づいてくる。
そして、
私たちの前でピタリと止まった。
隣にいる志穂は尋常じゃなく震えていて、雛は口を押さえて悲鳴をこらえている。私も、恐怖で涙があふれた。


