目的地に向かうタクシーの中で、前野は電話をかけた。

相手は、退屈してるのかすぐに電話に出た。

「おお、お前何やっとるんだ?」

いつもより気弱の老人の声がする。

前野は安心して言う。

「元気そうじゃないですか。これからそっちに向かいますから、どこにも行かないでくださいよ」

「どこにも行くなだと?相変わらず遠慮のないやつだな。どうもこうもないわ。

周りにぴったりと人がくっついて、どこ行くにもこいつらが付いてくる。
これじゃ、一人でトイレにも行けないぞ」