男嫌いな女王様とクールな臣下

影山は、掲載された記事に目を通す。

この記事に目を通すのは、もう何度目だろうか。
影山は、すでに暗記できるほど記事に目を通していた。

彼は、新聞が届く前から朝刊が届くのを心待ちにして、自宅でも一度目を通してきている。

しかし、朱音の前では初めて読んでいるみたいに振る舞った。



『大手デベロッパー　堀田土地開発（社長 堀田朱音）は、

新たに、会社　B.C. squareを設立し、
女性を中心にした商業施設開発事業に力を入れている。

B.C. squareは「B.C. square TOKYO」プロジェクトを立ち上げた。
中でも、シンボル的建物として、話題をさらっているのは、
今年完成した５５階建てのビル「B.C. square TOKYO」だ。

何しろこの施設、女性のための、女性による
生活と仕事の場所にすると、堀田社長が自ら明言している。

女性が働きやすい環境で働き、お気に入りの場所で
ショッピングをし、レストランで食事をするというものだ』

ゆっくり時間を置いて顔を上げる。

「記事はおおむね好意的で、よい記事だと思われますよ」

「記事はね」

影山は、社長である朱音がもっと前面に出て、会社をアピールすべきだと考えていた。

が、30歳にもならない、この女社長は写真付きの取材を極端に嫌う。

大きな組織を束ねるのは、人生経験を積んだ老人にも難しいことだ。

朱音は、年も若く、その上女性だ。

目立つ分、しくじると批判も大きい。

メリットよりもデメリットの方が大きいと考えてるのだ。