男嫌いな女王様とクールな臣下

前野が、ビニールの袋の中を見ている。
「君の秘書からみたいだよ。おかゆのレトルトと弁当は俺のかな。本当に気が利くね」
おかゆを朱音に見せながら、笑って見せた。

普段、表情の変化のあまりない人が感じよく笑うと、必要以上にドキッとするものだ。

前野に会ってたった一時間も経ってないというのに、驚くことの連続だ。


「ええ、今日は偶然そうなったわね」朱音は笑いをこらえた。

「温めて来るよ」

おかゆを手に取ると、彼はキッチンに向かった。

レンジで温めればいいよね?という声がする。

「はい」と答える。


影山は、何を考えてるのだろう。

きっと何も考えてないんだろうな。

朱音は、思い出しながら笑った。


でも、そのいい加減さが偶然を呼んで、運命が動き始めるかも知れない。

朱音はなんだか楽しくなる。

「少しだけでも、口に入れられるなら入れておいた方がいい」

「はい」

前野の顔がどっちともつかない表情になってる。

楽しいと思ってる?

それとも、面倒臭いって思ってる?

それとも……

「どうした?食べさせてやろうか?」
彼は、真剣なようだ。

「えっと……」

「ああ、ごめん。食べさせてやるはないか。子供じゃないって言うよな」

「そうね。今日のところは止めとくわ。
私は、ゆっくり食べるから、前野さんは、そっちのお弁当食べてしまって」

「ああ、これ?から揚げ弁当か」
また、さっきみたいに顔をくしゃっとさせて笑う。

「苦手だった?もし、気が進まないなら、ホテルにたのみましょうか?」

「違うって。から揚げが嫌いな男なんていないよ。分かったって。ちゃんと食べるから」
箸をぱきっと割ると、前野さんは、お弁当を一瞬で食べ終えた。

朱音の方も、半分も食べればお腹が満たされた。

「薬を飲んで。ベッドに行こう」

もう、ベッドに行こうなんて言われてドキドキしてどうするの?
朱音が独り言を言った。