影山は、朱音に向かって深々と頭を下げる。
「申しわけございません。数日前に新聞社から、お写真のことで連絡がありまして、宣伝部と広報部と協議の上、そのような形での掲載ということになりました」
知れっと影山が言うのを苦々しく朱音は見ていた。
「何で、社長への報告が当日になるのよ」
朱音は、一歩も譲らず厳しい声で答える。
影山は、愛情のたっぷり詰まった笑みを浮かべて朱音に言う。
「先々代の社長なら、そんな細かいところまでは気になされませんでしたが。お嬢様も先々代の社長のようにどっしりと構えてくださいませ」
朱音が祖父のことを持ち出され、すぐに口をつぐんだ。
一瞬で冷や水を浴びせられたように、勢いがなくなり考え込むのを影山は、嬉しそうに見守った。
「あのねえ、こういう些細なことが問題になるのよ。それも考えて……」
「はい。その辺りは抜かりなく。広報部とも協議いたしております。
数々のマーケティングの調査の結果、社長のお写真の方が、ビルの写真よりも効果が出るという結果が出ましたので」
「分かった。もういい」


