誰よりも、自分がお嬢様のことを理解していると自負してきた。
それなのに、主人の体調の体調不良に全く気が付かなかっただなんて。
しかも、会ったばかりの、見ず知らずの青年に、指摘される失態を犯していただなんて。
影山は、岩淵には、死んでも言えないと思っていた。
副社長の岩淵の言う通り、あの社長に、熱があると認めさせるだけでも一苦労なのだ。
多分、その場で倒れでもしなければ、具合が悪いなんて認めないだろう。
根性と意地でもやり遂げるという朱音の執念だけは、祖父から受け継いでいた。
ゆっくりと日が傾きかけている。
たそがれ時。
ここは、最上階にある会議室だ。
この会議室は、重役たちが会社の重要な協議をするのによく使う会議室だ。
社長の不在で、今日の議題は先送りとなった。
だから、こんなふうに老人会の話し合いみたいなどうでもい目的にも使用される。
影山は、一番末席の自分の席についた。
会議室に集まったメンバーを一人ひとり見る。
今では、老人会のようになっているが、長年会社を支えて来たメンバーだった。


