「社長が欠席だなんて珍しいな」
専務の川崎でさえ、心配そうに言う。
「ご心配なく。大事を取っていただいただけです。
熱があったので、今日はそのままお帰り頂きました」
影山が全員に向かって言う。
影山は、遅刻をとがめられず、無事に言い終えてほっとした。
気を抜いたところで、岩淵の視線がずっと自分に向けられていたのに気が付いた。
「あの社長に、会議を放り出して帰宅させるだなんて、お前よく説得できたな」
岩淵が疑い深い目で影山に尋ねてくる。
「まあ、はい。何とか」
影山は誤魔化した。
言えるわけがない。
朱音お嬢様に、30年近くお世話をしてきた。
ずっと見守って来た。
それなのに、高熱で苦しんでる朱音に気が付かなかったとは。


