朱音も、ソファに座った。
業務的なことは、川崎が確認してくれたはずだ。
要は、自分にできることはない。
いいか悪いか。
よほど気に入らない以外は、採用でいいと思う。
組織に入って、彼がどう振る舞うのか、彼と周りが合うかどうかは、入社してから考えればいい。
朱音は、いったんファイルを脇に置いて、ざっくばらんに。
フレンドリーに微笑みを浮かべた。
リラックスしてもらうために。
「前野久俊さんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
前野は深く頭を下げた。
「川崎社長の方から、すでに条件面などのお話は聞かれましたか?」
彼の方も、条件面では特に要望はないと朱音も聞いている。
「はい。一昨日、お会いする機会を設けていただいて、話し合いをしていただきました。川崎社長は満足していただいたと思います」
「そうですか」
なら、採用でいいじゃん。
なにも、自分が出しゃばらなくても。
そうよ。朱音は、ほっとした。
人当たりがよさそうで、品のいい落ち着いた雰囲気。
直哉とまた、違う知的な雰囲気を持ったいい男だ。
春妃のお眼鏡にかなったんだから……
容姿なんてどうでもいい。
技術的にも優れてるって聞いてるし、彼の技術も必要なのだろうけど、コミニュケーション能力の方が役に立つ確率が高そうだ。
彼に任せておけば、人事もうまく回ってくれそう。
前職では、実際にそうしてたんだっけ。
『もう、結構。お帰えりいただいて』
後は、そういうだけ。
好きな食べ物でも聞いとけ。
朱音がそう思った時だった。


