「失礼します」
丁寧にお辞儀をして、若い男性が入って来た。
ここはB.C.エレクトリックの社長室。
普段朱音がいるのは、B.C不動産の社長室だ。
B.C不動産の社長室は使い勝手にこだわって作ったから仕事がしやすい。
けれど、B.C.エレクトリックの社長室は業者の言うまま、必要なものを置いていったという感じだった。
殺風景で個性が感じられない。
朱音が、今日ここに来たのは、技術者として採用する条件だから、エレクトリックの社長室で面接となった。
不動産会社での面接っておかしいでしょう。影山にそう言われたからだった。
大勢が働いている不動産会社と違って、B.C.Eの方は、組織としてまだ整っていない。
B.C.エレクトリックは、必要に応じて場当たり的に部署を設けて行った。
なので社内の組織体勢がまとまっていない。
なもで、出来れば全体的に見通せる人材が欲しいと思っている。
今のところ、主なところは堀田土地開発の専務、システム担当の川崎専務が暫定的に社長職に就いて仕事をしてくれてる。
川崎は一応引き受けてくれたけど。
彼も本業で忙しく、新しい技術を覚えなきゃいけない立場に及び腰だ。
出来れば、後任を見つけてなるべく早くここから、逃げ出したいと思っていることだろう。
当人も若くないし、この女性向けプロジェクトに、1ミリも理解を示したくないという、古い人間だし。
そういう人間が仕方なく役割を引き受けているのだ。
彼は、代わってくれるなら、誰でもいいくらいに思ってる。
本人も、もう限界だと言い出してる。
春妃から推薦を受けたから、人事部だけで対応するという訳には行かない。
最低でも、どんな人物だったか、正しく評価しないと。
だから、朱音もたとえ、一社員の面接でもこうして会う必要があった。
川崎にも同席を求めたが、速攻で断られた。
『社長との面接は、私は同席しなくてもよろしいですね?』
『その方で、よろしいんじゃないですか?』
と川崎は、すでに決めてしまっている。
早々に逃げられてしまった。
影山に連れられて、応接室のソファに腰をかける。
朱音は寝不足で、頭がくらっとする。


