朱音は、窓際から離れてデスクに戻って、今日の朝刊を手に取った。
普段は、ネットの情報を活用している。眠ってるとき以外、朝起きてからすぐに二つの会社の状況、海外のプロジェクトの様子を確認することにしている。
それに、数々の会社の状況を示す数値を見極め、必要なら各部署の重役に指示を出す。
新聞を眺めるとしても、経済記事くらいだった。
デスクに置いてあるのは、経済新聞でもない、一般紙。
「B.C. square TOKYO」が新聞の特集記事で取り上げられることになっていた。
「ああっ?」
紙面を見て、思わず声を上げる。
と同時に、早押しで秘書室の呼び出しボタンを押す。
「なんだこりゃ!」朱音は、大げさに言って新聞を放り投げる。
ノックする音が聞こえ、ドアが開くと第一秘書の影山が入ってきた。
「お呼びでございますか?」
社長の朱音がどんなに声を張り上げようが、秘書の影山は涼しい顔でやってくる。
もういい年だというのに、相変わらず行動が素早い。
影山は、呼び出しボタンを押してからすぐにここにやって来て、朱音の前に立っている。
社長室のドアが開くまで1分ジャスト。
毎日寸分たがわず、律儀なものだ。


