男嫌いな女王様とクールな臣下

「お二方とも、印鑑はお持ちでしょうか?」
前野が真面目くさった顔で聞く。

「ああ、持ってるが、なんに使うの?」
榎田が聞いても、前野はにこやかに笑うだけだった。

「社長は?」

「ちょっと待って。取ってくるから」
引き出しの中からケースに入った印鑑を取り出した。

「はい、これでいいね」

「何するんだ?」榎田が怪しげに見る。

前野は、老人たちを前に丁寧に頭を下げる。

「一時間ほどで戻ります。待っていただいても結構ですし、お帰り頂いても結構です」

「ちょっと待って、ちゃんと説明してくれないと」
坂田が前野ににじり寄る。

「申しわけございません。付き添いは、2名様までです。他の方はお待ちを」

「ちょと待ってって」

「では、急ぎましょう」
前野は、バタンと無情にもドアを閉めた。

「久俊さん?」

「どこに行くかは影山さんが一番詳しそうですね」

「私ですか?」

「はい。朱音さんの本籍地が記載されてる区役所はどこですか?」

「区役所?何で区役所だよ」榎田が驚いて言う。

「お嬢様の本籍は、本社ビルの住所になってるはずです」と影山が答える。

「だったら、ここ千代田区でいいわけだ。了解」