社長の立場にいるからといって、会社のことをなんでも自由に何でも決められる訳ではない。
影山のように、祖父が社長をしていた時期に、堀田土地開発に入社し、社長の朱音が会社の重要な判断をするのに、重役として面と向かって反対してくる者もいる。
重役の許可が得られなくては、社長一人では何も出来ない。
祖父から仕える社員には、朱音も未だに相当気を使っているのだ。
現に、「B.C. square TOKYO」を自分の会社で立ち上げようとしたが、重役全部の反対にあって、結局別会社を作る羽目になってしまった。
「あの……お嬢様、一言申し上げてもよろしいでしょうか?」
さっきから、朱音の様子を見守っていた影山が笑いながら言った。
影山が「お嬢様」と呼ぶときは、これもまた、生まれた時から務めて来た朱音の守役として発言する時である。
こうやって、この老人は、まだ若い朱音のことをけん制するのだ。
朱音は、ちらっと顔を上げて面倒臭そうに、子供のころからじいと呼んできた老人を見た。


