男嫌いな女王様とクールな臣下


朱音は、父母と過ごすより多くの時間を祖父と過ごした。

そうして幼いころから、経営者としての英才教育を祖父から受けていた。



「君のとこも、両親が忙しかったの?」

前野がそう尋ねて来た。
彼の腕に抱かれて心地よくしている今なら、ずっと遠ざけて来た、古い感情と向き合えるかもしれない。

そんなふうに、支えてもらえれば、話せるかも知れない。


「両親は、忙しかった訳じゃなかった。時間は十分あったわ。
でも、私に関心がなかったの。両親とも私がいることを忘れてるかのようだった。
私は、祖父母に育てられたの。だから、私には両親との思い出がないの」


「そっか。辛かったな。だから、そういう気持ちよく分かるよ」

「うん……」

「一人ぼっちでいるのも、大勢の人間の中で忘れられて育つのも、同じだよ。君が辛かった気持ちは、よくわかる」