「今は、慎重に事を運ばなければならないのに。こんなに目立ってしまって」
朱音がため息をついて言う。
記事の中にも、よく思わない読者に気を使って、さりげなく批判的な意見も載せていた。
女性ばかりを優遇するのは、不公平ではないかという意見に答えるという形で、社長としてコメントも載せてもらっている。
『本来、会社組織というものは、長らく男性が作り上げてきたものです。
私たちは、いったん、その常識だと思われてきたことを取っ払って、考えてみるべきだと思います。
全然別の女性の発想で会社という枠を取っ払って、ビル全部が丸ごと一つの大きな組織として相互に作用するのではないかと期待しています。
もちろん、男性をまったく退ける積りはありません。
ビル内のホテルは利用できますし、この制度が適用されるのは、ミッドフロアのみで、アッパークラスのフロアには、女性を優遇する条件は設けていません。まったくフェアなものです』
読み上げてから、影山が言う。
「十分立派じゃないですか。
どこに卑下して掲載を恥ずかしがるところがあるんですか?」
「うまく説明できないけれど、目につくってことは、いろんな人が私のことを思い出したり、私を利用しようと思いついたりするってことよ」
「さすがにそれは、考えすぎでは?」
「だといいんだけど」


