男嫌いな女王様とクールな臣下

気が付いたら、榎田は後ろから彼女を抱きしめていた。

「大丈夫だって、何とかなるから」
振り向いて欲しくて、
耳元で精一杯囁いてるのに。

朱音は、抵抗すらしない。

朱音は、自分のことを兄だと思ってる。

だから、他の男が近づくと拒否反応を示したのに、自分だけは拒まなかったんだろう。

特別だと思ってたのに、
『一緒にいて欲しい』と一言が言えなかった。

いきなり現れたやつに持っていかれるなんて。

あり得ないだろう。

何年、こいつのそばにいたんだ?

今からでも誘ってみよう。

もう、打ち明けるチャンスだって、残ってないかも知れない。

「ん、どうしたの?榎田?」

疑いもなく、問いかける真っ直ぐな瞳。
本気で、何とも思ってないんだな。

その純粋さに恐れをなす。

「家まで送っていく。一緒に行こうか?」
朱音は、首を振る。

「大丈夫よ。あなたにも仕事があるでしょう?私はホテルに泊まるから」

「そうか。わかった。何かあったらすぐに呼んでくれ」
結局大事な子には、何も言えない。