「あ!長瀬!アレ!」


夏は青々とした芝生が生い茂っている川原の土手は、今は枯れた茶色い芝生ばかり。


だけど、その中に咲く小さな黄色い花。



「タンポポだ!!」


「だね。ここら辺春になるとすげぇ咲くよ」


「そうなんだ!陽当たりがいいから、春と間違えちゃったのかな」


「もうすぐだけどね」


「うん。もうすぐだね」


「…ふ」


「ふふふ」



長瀬と視線が交わって、それがおかしくてお互い笑ってしまった。




今日の風は、春の匂いがする。


もう、すぐそこまで春がやってきている。


花が芽吹き始めるように、沢山のことが動き始める季節が––––––。



「咲希センパイ」


「ん?」


長瀬の手が風に舞う私の髪を耳にかける。


視線と視線が交わって、それからゆっくりと長瀬の唇が私の唇に触れた。


と、思ったら。



「んっ…ん!?んんん〜〜!?!?」


長瀬が顔の角度を変えた途端、一気に深いキスに。


「…んっ!」


今までのキスは、相当手加減されてたんだろうなって…そう思うような長いキスに頭の中が軽いパニックを起こす。


何も考えられない思考の中、ドンドン長瀬の胸を叩くと、ようやく長瀬の唇が離れてくれた。