長瀬にうっかりやきもちを見破られてしまったあの日から、こうして長瀬に交際を迫られるのはもう何度目か分からない。


一応、世にいう両思い。


付き合ったところで、何ら問題はないだろう。


むしろ、早く付き合いなよ!と言ってくる茉莉の顔が浮かんでくる。



……だけど。


だけどさ?



「つ、付き合うなんて絶対無理っっ!!!」



なんです。


私には。


絶対に。


「えー」


「えーじゃない!そもそも!山吹さんはどうなったわけ!?あんた、あの子が自分のことどう思ってるか分かってるでしょ!?あんたが私にそういう態度を取れば取るほど、私は気まずくなるんだからね!!」


目で殺されるんだから!目で!


「あーあれね。いい加減うぜーから、ちょっと脅かしてやったら寄ってこなくなった」


「……は?脅かす??」


「“俺と付き合うためなら何でもする”とか言うから、“じゃあ、どっか売り飛ばされても文句言えねーよな?”って言ったら、真っ青になって逃げてった」


「………」


そりゃ寄ってこなくなるわ。


あんた、本当につてがありそうで怖いっつの。