六月ど真ん中の今、日本は全体的に絶賛梅雨前線通過中。

つまり、毎日毎日雨でジメジメしてて、外へ出かけられない。

だから亜希乃の提案で、鳴夏を誘って阿弓の家である榊家にお邪魔して怪談大会をすることになったのだ。

今はトップバッターの鳴夏の怪談が亜希乃の悲鳴で中断された所。

「おいおい、なんかデカい声聞こえたけど、どーかした?」

氷入り麦茶を入れたコップをお盆の上に乗せた阿弓が戻ってきた。

「亜希乃だよ。鳴夏の話にビビってんの」

「やっぱりか」

ハンッと鼻で笑って、阿弓は卓袱台にコップを置いていく。

「あれ?阿弓、一つ多くない?」

私、亜希乃、鳴夏、阿弓の四人なのに、コップは五つだ。

阿弓はキョトンとした顔で、ゆっくりと腰を下ろした。

「え?」

「……え?」

コップの中の氷がカランと音を立てる。

「え、いるじゃん、そこに……」

阿弓が指さしたのは、私と鳴夏の間の何も無い空間。

「びゃーーーーーーーーーーーーっっ!!」

亜希乃が後ずさりして壁に激突し、後頭部を打ち付けて頭を抱えた。