それと―――


なぜか音遠くんが頭の中に出てきた。

抱きしめようとするかのように、腕をこっちに伸ばしてる。

ん?

いやいやいや、音遠くんは友達だから!

私の一番は兄さんだから!

狭いスペースで頭をぶんぶん振って、箱に頭をぶつけて我に返る。



でも……確かに音遠くんにも会いたい。

なぜか今になって、あの冷たい手やお日様みたいな笑顔が恋しくなる。



―――日ノ宮 音遠(ひのみや ねおん)。

素性は詳しく分からないけど、私の遠縁の親戚で、怪盗としての私を味方してくれてて、優しくて、でも、不思議な人。

(音遠くん……)

会いたい。

会いたい……

早く帰りたい……帰れるのかな……


キキッ、ピ-ッピ-ッピ-ッ……


(あれ?)

これ、車を駐車場に停めてる音?

目的地に着いたのかな。

ガチャっと運転席のドアが開く音がして、咄嗟に身構える。

(来た!)