黙っていられなくなった私と亜希乃が椎馬兄者に詰め寄る。

蝶羽は猫目で、毛先がクルクルした腰までのロングヘア。

対して鳳莉は、前髪も後ろも真っ直ぐに切り揃えた焦げ茶のストレートヘアに、仔犬を思い出すアイドルらしい可愛い顔。

「全然似てないよ、あの二人は!」

「そうですそうです!!」

「まぁ、二人を見慣れてる阿弓や亜希乃ちゃんはそういう反応をするだろうが、犯人は芸能人の鳳莉ちゃんは見た事あるだろうけど、一般人の蝶羽ちゃんはおそらく初見だ」

亜希乃に揺さぶられながらも、淡々と推理を進める椎馬兄者。

「おまけに二人は、図らずとも同じ髪型をしてしまったし。結んでしまえばパッと見シルエットは同じだろう」

あ……

言われてみれば、二人は背格好は同じくらい。

蝶羽は現場で髪を結ったから分かんなかったけど、遠目で見れば似てるかもしれない。

「電話では席の指定は無かったからな、私達は入口近くが良いと思ったが、今思うとあそこは入口からすぐには視界に入らない。蝶羽ちゃんの席の方が目に付いたんだろう」

「でもよぉ、椎馬。それだけで断定しちゃうの?」

颯馬兄さんの言う通り。

それだけで間違えるとは思えない。

犯人は背格好が似てるだけで判断するほどの馬鹿なのか?

「そっか、鞄!」

亜希乃が閃いた。

「あー、鳳莉の鞄持ってたら、間違えるわな」