蝶羽が誘拐された。

理由は分からない。

今言えるのはそれだけ。

「あ、蝶羽ちゃん……大丈夫かな……」

涙目で鳳莉が不安げな表情を見せる。

「大丈夫かなじゃなくて、大丈夫って蝶羽に言えるような状況にしてやるんだよ。鳳莉もなんか知恵絞ってくれ」

そう言いつつも、私は蝶羽が攫われた理由が1ミリも分からない。

元々蝶羽が狙いだった?

いや、蝶羽は今回オマケ要員みたいな感じだ。

来なくても良かったし、必ず来るとは限らなかった。

「阿弓、斬泪晶は無事なんだよね?」

「あぁ、この通り」

私の手首には、しっかりと斬泪晶が嵌められてる。

盗られてない。

という事は、目的は、斬泪晶じゃない?

「えぇ、えぇ、はい、そうです。女子高生が……はい、大至急お願いします」

颯馬兄さんが電話を切った。

おそらく相手は仲間の警察関係の人だ。

「颯馬兄さん……」

「一回警察の方に連絡したから大丈夫。阿弓ぃ、そんな凹んだ顔すんなよ〜」

颯馬兄さんは呑気に私の頭を撫でくりまわす。

……凹んだ顔くらいするさ。

親友が攫われたんだから。