カフェ『鮮紅』。

警察として事情を話してくれた颯馬さんのお陰で、今ここはほぼ貸切の状態になってる。

ちなみに今の会話、『』のセリフはインカム越しの鳳莉のセリフ。

緊張気味の鳳莉は、今日は後ろで緩く一つ結びにしたヘアスタイルで、地味な装いはパッと見アイドルに見えない。

入口付近の観葉植物に一台、天井に一台、私のすぐ後ろに一台、そして鳳莉の近くの席に座った阿弓が鞄に隠した一台、合計四つの海馬さんが貸してくれたカメラが鳳莉と鳳莉の周りを撮ってるから、違う意味で緊張してるのかもしれないけど。

颯馬さんはカウンター席で新聞越しに鳳莉を見て、海馬さんはその隣で110番する準備。

鳥馬さんと椎馬さんは、別の場所で音だけ聞いてる録音係。

天馬さんは婚約者の華音(かのん)さんに協力して貰って、デートのフリをしてる。

透馬さんは通常運転。いつも通りバイトをこなしつつ、鳳莉に気を配ってる。

阿弓は通路を挟んで鳳莉の隣の席。指をパキパキ鳴らしてもう戦闘モードになってるのが恐ろしい。

私と亜希乃は一番奥の二人がけの席で見張ってる。

全員インカムを付けてて、こっそり会話が出来るようになってる。

準備万端だ。どこからでも来なさいって感じ。


カチッ、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン…………――――


掛け時計が、約束の四時を指した。