私はまっすぐ自分の席に向かった。

鳳莉は私達と席が離れてるから、ここで一旦別れる。

「おはー」

「おはよー」

高そうな腕時計をメリケンサックかナックルダスターみたいに指にはめた阿弓と、なぜか頭から木が生えてるみたいな状態の亜希乃に出くわした。

「……」

えーっと、どっちからツッコもう……

「アゲハ嬢、これかっこよくね?海馬兄貴が教えてくれたんだけど、こうやって時計をここに巻くと、殴る時手が痛くならない上、相手にダメージ与えられるんだって!ナックルより手軽!」

「蝶羽〜、近道しようとして植木に三回くらい突っ込んだんだけど、今あたしの頭どうなってる?」

なんでこういう時に限って二人揃って妙な事始めるかな!!?

「阿弓、今日の本来の目的は鳳莉を守る事だからね?犯人確保は二の次だからね?亜希乃、頭から木が生えてるみたいになってるよ。葉っぱと枝がすごい。櫛貸してあげるから梳かしときな」

二人は大人しく普段のスタイルに戻っていく。

あ〜、オカンか、私は……

1パック三個入りっていうか、私がいないと二人がダメって感じなんだよ、鳳莉。

「ねー、あたし昨日考えたんだけどさー」

亜希乃が櫛で髪を梳かしながら喋る。