「えーと、白いベンチの所にいるって言ってたよね」

僕は白衣姿の女の子を探そうとした。けど、真夜中に白衣って目立つからすぐに見つかった。

栗色の髪が街頭に反射して光ってる。

彼女……マスターも僕の姿を確認すると、ちょいちょいと手招きした。

「お疲れ様。で、宝石はどうだった?」

「流石に義眼を外すのは無理だったけど、偽物だってすぐ分かったよ。光沢も純度も違う」

「あっそ。残念だけど仕方ないね。あんたが無事でよかったよ」

「僕は怪我とかしないから、大丈夫だよ」

元気な事をアピールする為に両肩をぐるぐる回すと、マスターはホッとしたように微笑んだ。

「怪我が無いのは見て分かるけど……他に不調は?」

「そういえば……」

頭の中に笑顔の蝶羽ちゃんの姿が浮かび上がると、左胸がトクントクンと速いリズムを刻んだ。

蝶羽ちゃんの事を考えてると毎回こうなる。一緒にいると特に。

「ねぇ、ここの所時々……ううん、ずっと苦しい状態が続いてるんだけど、これ何?」

マスターの顔色がさっと青ざめた。

かと思うと僕の肩を強い力で掴んで揺さぶる。

「だから恋しちゃダメって言ったじゃん!」

「こい……?恋って何?分からない?恋?恋って?」

ガクンガクンと揺さぶられながら、思考回路がショートしていく。

マスターは怒ったような悲しそうな、複雑な表情をしてる。




「あんたは偶然魂が宿っちゃった、ただの生き人形なんだから!!」





マスターを落ち着かせなきゃ。こういう時、日ノ宮 音遠ならどうする?

少し考えてから、僕は『プログラム』通り、口角を上げて微笑んだ顔を作った。











……To be continued