「音遠くんごめん!」

私はさっきの音遠くんみたいに、両手を合わせて頭を下げた。

「え?何が?」

「上手いごまかしが思いつかなくて……嘘つかせちゃってごめんね、音遠くんが弱虫だと思われちゃった」

「あぁ、大丈夫だよ。気にしてないし。それに僕が『ちょっと弱虫』のフリしてれば、僕の都合に付き合うって形で蝶羽ちゃんが今後潜入しやすくなるでしょ」

な、なるほど……計算高い。

でも音遠くんだって男子高校生だ。私より気弱だなんて思われるのは嬉しい事じゃないはず。

まだ納得いかない顔の私を見て、音遠くんはくしゃりと頭を撫でてくれた。

「心配してくれてありがとう、でも本当に大丈夫だから。蝶羽ちゃんは自分の事に集中して。君のサポートをするのが、僕の役目なんだから」

街頭に反射して緑色に光って見える瞳に見つめられ、一瞬息が止まった。

うー……音遠くんには適わないなぁ。

「それに、蝶羽ちゃんが無事でよかったよ。颯馬さん達が来なかったら、僕は剥製になる覚悟してた」

「え!?」

「僕が剥製になるから蝶羽ちゃんは見逃してって言うつもりだったよ」

そんな決死の覚悟があったとは……

「おーい!二人ともー!!」

ぶんぶんと手を振る颯馬さんが戻ってきて、私は慌てて姿勢を直した。

後ろには阿弓もいる。話が終わったらしい。

「ごめんなー、バタバタしてて」

「いえ、大丈夫です。お忙しい中来てくださってありがとうございました。心強かったです」

音遠くんが笑うと、颯馬さんの口元がニマニマと緩んでく。

「うはははー!ま、俺は正義の味方だからねー!当たり前だよねー!」

相当嬉しいのか、特撮ヒーローみたいなポーズを決める颯馬さん。

色々台無しだ。


ポスッ


「えっ!?」

音遠くんが急に私の膝に倒れ込んだ。