「あのさ、めっちゃ言いにくいんだけど……」

阿弓の口から独り言みたいに小さい言葉がこぼれた。



「これ、私」



「「「えーーーーーーーーーーー!?」」」

まさかの事実に私も音遠くんも染子さんもビックリだ。

「あ〜、これアレか。確か前日にドレス汚して換えがなくて、俺のお下がりで代用したんだよな」

「そうそう、リングガールがリングボーイになったー!ってちょっとザワついたよな」

お互いを指さして思い出話に花を咲かせる榊兄妹。

けど対照的に染子さんは魂が抜けたように口をぽかんと開けてた。

そりゃ、ずっと何年も追ってた美少年が、女の子だったんだから。

染子さんに気がついた阿弓がきまりが悪そうに頬をかいた。

「あー……つまり、私があのオバサンの性癖狂わした張本人って事……?」

「そういう事になるね。阿弓」

「えーと、なんかスンマセン……?」

とうとう染子さんがガックリとうなだれた。

すかさず颯馬さんが手錠を取り出す。

「えーと、11時38分、伊原 染子……えーと、なんかいろんな罪で逮捕〜」


ガチャン!


颯馬さんの手錠の音が静かなホールに響いた。

というか、そんな適当な逮捕でいいの?