「で、なんでこんな事したんだよ、オバサン」

もう抵抗しないと思ったのか、阿弓は抑えてた手を離した。

「……ずっと探してたのよ……」

染子さんももう気が抜けてしまってるらしい。床にぺたんとへたりこんだ。

「もう十年くらい前かしら……知り合いの結婚式に参列した時に、とっても美しい少年を見たの……お人形みたいに綺麗で、手元に置いておきたくて……」

イカれてるな。

無意識に眉間にシワがよってしまう。

欲望は人をこんなにも歪ませてしまうのか……

「あの手この手を使ってあの子を探したのに、ぜんぜん見つからなかったわ……」

「あんなに美少年を集めてて、それでも見つからなかったんですか。もしかしたら成長して美しくなくなっちゃったんじゃないですか?」

音遠くんが冷静に分析すると、染子さんはガバッと顔を上げた。

「そんなわけないわ!あんなに美しい子だったんだもの!成長したくらいであの美しさが無くなるわけない!」