握った手が徐々に汗ばんでく。

どうしよう……

「絶対、助けるから」

ぐっと音遠くんが歯を食いしばる音が聞こえた。

もう私だけを助ける方法しか考えてないみたい。

「ダメだよ!音遠くんも一緒に逃げなきゃ!」

でも、私もいい案が浮かばない。

何か奇跡でも起き──────……




ドッカーーーーーーーーン!!!





「え!?何!?」

爆発音が聞こえてきて、私も音遠くんも尻もちを着いた。

土煙が収まった先に見えた人影は……

「そ、颯馬さん……!?」

「あ、阿弓……?」

壁をぶち破って登場した榊兄妹だった。

田舎のヤンキーカップルみたいにゴツいバイクを二人乗りしてる。

ブオンブオンと威嚇のような蛇行の後、私達と染子さんの間に挟まるようにして止まった。

颯馬さんがヘルメットを外すと、汗で濡れた茶色の短髪が揺れる。

「颯馬さん!なんでここに……?」

「何って、展覧会の予定終了時刻めちゃくちゃ過ぎてるから、警察に「息子が帰ってこない」って通報が殺到してるからだよ!出入口鍵かかってるし、展覧会にしちゃおかしすぎるから来たんだ!」

颯馬さんが「ほら!」とスマホの待受を見せる。

時計はもうとっくに0時を回って次の日になってた。

「え!?もうそんなに経ってたの!?」

どうりで疲れるわけだ。緊張してたからだけじゃなかったのね……

「おらァ!!」

いつの間にかステージの上に忍び込んでた阿弓が、呆気に取られていた染子さんにハンマーロックを食らわせた。

こうして、突如乱入した榊兄妹によって、スピード解決したのだった……