え、これはあれかな。
殴っていいやつかな?
振りかぶって全力でいっていいやつかな?
「落ち着いてよ」
落ち着けるかボケ。
ジト目で見ていると、微笑んだ彼は。
「可愛いなと思っただけなんだけどね」
騙されない。
騙されないぞチャラ王子。
「それはどうも」
とほぼ棒読みで返すと。
「まぁ、これから全力で押してくから、慣れてほしいな」
できるかボケ。
絶対私で遊ぶ気だろこんちくしょう。
「却下します!」
失礼だろうが、なんだろうが関係ない。
私は振り返ることなく全力ダッシュ。
バルコニーを去って部屋に駆け込んだ。
部屋の扉を大きな音を立てて閉じると、そこに座り込む。
走ったせいでゼェゼェと暴れまくる心臓を抑えつつ思ったのは。
…………………どうしようか。
素晴らしく面倒くさくなってきた。
という真っ当なことだった。