「その興味は今すぐ抹消して頂きたい」
と、私がはっきりと告げると、ギルバートは、無理だねとはっきり言いやがりましたとさ。
「ねぇ、それはさ、結婚が嫌なのか俺が嫌なのかどっち?」
呆れ半分面白さ半分といった顔のギルバートは、たぶん私の答えなんてお見通しなんでしょーね。
「どっちかといえば結婚。あなたの事はよくわからないもの」
まぁあなたも苦手な方ではあるけれど。
「じゃあ俺のこと知ってからってことで」
よろしく、と片手を差し出されたので、とりあえずその手を握る。
と、そのまま引き寄せられ、ポスンとギルバートの胸に受け止められる。
と、握られていた手が離され、彼は両手で私の背中と腰をホールド。
え。
まって。
これは俗に言う抱きしめられているという状況では。
突然の彼の行動に理解が追いつかず、ぱちくりとまたたきを繰り返す。
いやぁ、人間本気で驚いたら反応なんてできないらしい。
と、静かに戸惑う私の上からクス、と笑い声が聞こえたので。
顔だけを動かして彼を見上げると、ニコッと笑う瞳と目が合って。
何故かそれが近づいてきたなぁと思った瞬間、額に触れる柔らかいもの。
それが何なのか気がついたとき、私は。
とりあえず右手を挙げて。
振りかぶってバシン!と、彼の頬を平手打ち。
「痛った」
と、さして痛そうでもない表情と声、彼の手が緩まったのを確認してその中から抜け出す。
「なっにすんの変態!!!」
全力で叫び非難する。
「変態って………額にキスしただけだろ?」
だけ?
はぁ、だけと申すかこのやろう。
「普通されたらビックリするでしょ!?」
先に言っておくが、これでも私は必死だ。
あの甘ったるい両親に囲まれていたせいで、なんとなく人肌が嫌になってる私です。
そして私に言いよる男性は徹底的にお父様が排除していた。
つまり私は今まで男性との触れ合いが皆無だったわけで。
そんな状態の女の子に突然デコチューはいささか突然過ぎると思うのですよ。
と、心中大暴れな私を見て、ギルバートは。
「…………………初めて?」
「………………悪い?」
仕方ないじゃないか、機会がないのよ。
ってか普通ないでしょ。
「…………じゃあ俺が初めての男なんだ?」
「は!?」
何言ってんの何言ってんの何言ってんの!?
そういう言い方はおかしくないかな!?
なんか誤解生まれそうだからやめて!!
「ま、違ってないけど間違ってる!」
「じゃあ何人目?」
やめてほんとにやめて。
なんか嫌、汚されてる気がする。
もうやだこの人、ペース乱される!
「………………初めてされたけど!」
ヤケクソになって顔を隠す。
もう何も言わないで、ほんとに取り返しつかなくなる、私の心が。
と、湯気がでそうになっていると。
「…はははっ!!」
爆笑されました。