そして手を引かれて連れていかれたのは、庭園を見渡せるバルコニーだった。









「ここからの景色が素晴らしいと聞いたので」







誰に、と聞いてもよろしいのか、それともやめた方がいいのか。








なんとなく聞いたらダメな気がするのは何故だろうね。






と、一人もんもんと考えていると、なぜ伝わったのかわからないけれど。







「姫の母上から聞きました」






という考えもしなかった答えが返ってきた。








いや、メイドとかから聞いたのかと思ってたんだよ…………。








「…………………いつの間に…」








私のボソリとした問に、ふ、と微笑をこぼしたギルバートは。







「…………」






何故か微笑んだまま無言で私を見つめた。










え、なに。







なんでそんな、生暖かい目で私を見るの。








…………………あ、見たことあるこれ。







私が問題起こした時に、お父様が私に向ける目だわ。









「………えと、今日はなんで呼ん…いえ、どう言った用事でしょうか」








居心地が悪くて、沈黙に耐えきれずについつい私から話しかけてしまった。







咄嗟に出てきた言葉のため、気軽な感じになってしまい、慌てて直す。








仮にも相手は王子だ、失礼はいけない。








「いいですよ、気楽にしてください?そっちの方が、私としても楽です。代わりと言ってはアレですが、私もそうしても?」







「………じゃあ、お言葉に甘えて。どうぞ」








線を引くためには敬語がいいかとも思ったものの、疲れるからやめる。







この人相手に畏まるのも変な気がしたし。







「どーも。……今日は単純に、昨日のことを謝りに」







昨日。






聞いた瞬間顔が曇った私を見て、ギルバートは少し困ったように笑いつつ。







「ほんとに無礼なことをした。もうしないと約束するから、許してくれないかな?」






「………………別に」







怒ってない。





断じて怒ってなどいない。






この男相手に私が?はっ、笑わせる。







………………………いやほんとに。







むかっとしただけですが何か。








「ほんとに、綺麗だなって思っただけなんだけどね」







「綺麗?私よりも綺麗なひとなんて見慣れてるんじゃないの?」







アンタ王子でしょ。







言い寄ってくる女がいてもおかしくはない。






ここにいる無愛想姫も経験がある。






「まぁそうかもしれないけど、興味ないから忘れたな」







「わ、サイテー」







さらっとのたまった女の敵発言に対してこれまたさらっと非難すると。







「君には興味あるけどね」







と、甘い笑顔で口説かれた。






わぁ、何この人。






はっきりいうとなんか怖い。