仕方ないので、というかほとんど無理やり着替えさせられ、部屋を追い出された。
そしてブツブツ文句を言いつつ廊下を歩く。
ギルバートかぁ………………会いたくない人ナンバーワンですよ。
まぁなんか、絶対こうなるとはわかってたけど。
わかってたけど、急過ぎやしませんかね。
…………………どうしよう、ボイコットしようかな。
ここから書庫にでもいって寝てようか………と思っていると、前方に高身長の人が立っていた。
こちらを振り向きはしないけれど、確実に気がついているだろうことがわかるのはなんでかな。
一歩、二歩、三歩めを踏み出した時、その長身の影がこちらを振り返った。
色の濃い茶髪。
口元に浮かぶ笑は色気がにじみ出たもの………………あぁ、あいつだ。
…………に、逃げられない。
自然とゆっくりとなる足をどうにか進め、彼の前まで歩いていく。
「……………おはようございます」
私が仏頂面で挨拶をすると、彼はそっとお辞儀をして。
「おはようございます。もしかしたら来てくれないのでは、と不安でしたが……安心しました」
彼は顔をあげると、そう言って微笑みつつ、そっと私の手を引いた。
極々自然に取られた手を見下ろすと、彼はきゅっと手を握った。
何のために、と思って顔を上げて彼を見ると。
「姫は華奢で可愛らしいですね」
と、また歯の浮くようなセリフが飛んできた。
父がよく母に言ってるのを見ている身としては、羞恥が……………。
ふい、と顔をそらすと、彼がクス、と笑う気配がした。