「ちっ!!」
自室に戻ったあと、アルバートは羽織っていた上着をベッドに叩きつけた。
そして、少し乱暴にシャツのボタンを2つ外す。
「ンだよホンっっとに!!!」
ムカつく、と自身の金髪をワシャワシャと荒らすと、ハラリとひと房、金髪が視界に落ちた。
そしてそれを見て、同じ金髪の姫を思い出す。
乱暴に目元に落ちた髪を払い、ベッドに倒れ込む。
………………あの姫もムカつく。
自分が猫かぶっているのは、2人の兄しか知らないことだ。
両親ですら、それを知らない。
………まぁ元々は両親を欺くために始めたことだから、当然といえば当然だが。
まだ16である自分は、2人の兄より身長も低ければ、顔も幼い。
だから、単純にいい子を演じるより、愛嬌のある子を演じる方が楽だったのだ。
自国のメイドや、舞踏会などで出会った女性たちには、好評であったし、それ故に、自分の娘と……という婦人も多かった。
なのに。
「何でなびかない………!」
どれだけ自分が可愛いと好評な笑顔を向けても、甘えるように涙目を見せても。
戸惑うくらいで、好印象は与えられなかったように思う。
「っ!!」
彼女の様子を思い出し、身体を起こしつつ枕を床に叩きつける。
急に体を起こしたため、少し息が上がった。
それを整えようとそのままの体制で浅い呼吸を繰り返すと、頭の中も少し落ち着いた気がした。
「………少し、変えるか」
可愛いだけのアルバートくんじゃ、彼女には届かない。
「………絶対、俺の物にする…」
3番目に生まれた彼にとって、完璧な兄2人はコンプレックスだった。
もし、エルネスタ……彼女が自分を選んでくれれば、その兄の上を行くことになる。
だから。
「…………絶対……!」
自分が、振り向かせるのだ。