日頃ヴィンセントを悩ませている自覚のあるギルバートとしては、いつ兄の怒りが頂点に達するか気にしないでもない。







一方のヴィンセントはそろそろ手を挙げても良いのではないかと考え出していたが。








とりあえず落ち着こうと、ギルバートの部屋を出て自室に戻ったヴィンセントは。







「……………はぁ……」





ベッドに腰掛け、そのまま上体をベッドに投げ捨てた。







すると、窓から差し込む光を眩しく感じ、右腕で目元をおおう。








「……………………」








弟の問題を放棄すると、次に彼の脳裏を過ぎるのはこの国の姫、エルネスタのことだった。








運命の夫婦と名高いシンデレラ夫妻の一人娘ということも興味の対象ではあるが、何より気になったのは彼女の様子だ。







父王が挨拶している間、他の国の姫であるならば、笑顔で相槌を打ちながら聞いているものだが、彼女は。








「興味が無さそうだったな……………」







そして、自分たちが前に出るまで、まるで存在に気がついていなかった。







婚約者となると、少しは相手に興味が沸くのではないのか。







少なくとも、自分は彼女がどういう人間なのか、噂程度のことは会う前に知っていた。







そして、1番気になったのが、ギルバートとのアレだ。








今までの女性なら、ギルバートが綺麗だと言えば、頬を赤らめて嬉しそうにしたものだが。







彼女は冷ややかな目を向けるだけで、彼からの手の甲へのキスも拒んだ。






「……………………手強そうですね…」








まぁ手強いも何も、自分は本来こう言ったことに慣れていない。






口説くとかそういうのは弟の得意だ。







ヴィンセントはまた一つ、深いため息をついて。







「…私は私なりに、彼女に接してみましょうか」





と、諦めにも近い決意をして、ベッドから立ち上がった。