まぁ、私は悪くない。







自然と早足になるのをどうにか隠しながら歩く。





それからは彼らから声をかけられることは無く。






声をかけないということは、嫌われたかな?と、少しウキウキした。





まぁ当然といえば当然かな。







視線の一つで憤慨してる女なんて面倒くさくてやってられないでしょ。






これはちょっと良かったんじゃない?







………嫌われて喜ぶってのもおかしな話だけれど。






っていうか怒ったり喜んだり私の心中忙しいな。





まぁコロコロ感情が変わるのは親譲りっていうことでここは一つ。






………………考えてることがコロコロ移るのも親譲りってことで。







とりあえず、もしかしたら楽に婚約破棄できるかも、と軽くなった足取りで部屋へ向かう。






あらかじめお父様に聞いていた部屋の場所までたどり着くと、彼らの顔を見ること無く。






「ここから奥までの3つの部屋が滞在部屋になります。部屋は好きに使ってください」








と簡単に説明して、くるっと背中を向ける。





と、ガシッと腕をつかまれた。






何事だと振り向くと、哀しそうな瞳。







あぁ、あの時の目だ。






「エルネスタ様……怒ってる?」






やばいと思った。






何故か私は最初に見た時からこの目に弱い、というか苦手。






私が悪いのかという気分になるからかな。






「いや、別に………」





とりあえず逃げ出したくてそう曖昧に返すと、アルバートは首をかしげた。






「ってことは、怒ってない?」





「………………はい」






あ、つい。






怒ってるって言った方が印象悪かったなぁ……。





と、軽く後悔していると、彼はふっと微笑んだ。






「よかった。これが原因で話すらさせてくれなくなったらどうしようと…」






うわぁ、やらかした。






安心しちゃったよ王子様。







「はい、えっと……あの、手離して……」






とりあえず遠まわしに拒んでおこうとそう言ったけれど、アルバートは微笑んだまま手を離したから確実に伝わってないな。






と、少し落ち込んだ私は、なんだか気疲れして。






「………何かあったら近くの使用人にお申し付けください……」







と、ほぼ棒読みで力なく声に出して頭を下げた。







そしてそのまま今度こそUターン。





逃げるようにその場を立ち去ったのでした。