わけがわからん。
堅苦しい挨拶が終わったあと、王様と王子3人は両親との会合だかがあるため、私は一旦自室に戻ることを許された。
私はさっさと部屋に戻ると、マギーに悪いと思いつつ結い上げている髪を解いた。
そして無駄に苦しいドレスを、これまたマギーに申し訳ないと思いつつ脱ぎ捨てる。
…………こう思ったら私、いつもマギーに世話になってるわね………今度なにかお礼をしなくちゃ。
まぁそれはいい。
私はドレスの下につけていたコルセットをどうにか外し、それもドレスの上に投げ捨てる。
代わりの、いつも着ているドレスを引っ張り出し、頭から被る。
ドレッサーからくしを持ってきて、ベッドにぼふっと脚を伸ばして座りつつ髪をとかす。
「はぁぁ………」
わけわからん。
くしをベッドに投げ捨て、背中から倒れ込む。
ぼふんと柔らかいベッドが沈む。
そう、訳が分からないのだ。
会うだけ。
お母様は確かにそう言った、えぇ、言いましたとも。
だから今回のは顔合わせで、それから文通など何やらすることになると思ってた。
それで、とりあえずその中で嫌われる何かを考えようと思ってたんだけどな。
………………なのに何?
1ヶ月?
1ヶ月も知らん男と過ごせと?
しかも婚約者だのなんだの。
結婚する気ないっつの!!
長ったらしい王様の挨拶や、王子たちの様子からして、あっちが確実に婚約する気で来てるのはわかっている。
そして両親もそのつもりでいることも。
そこに愛なんて存在しないということも。
わかってる。
だから嫌というわけでもない、言うなれば。
結婚自体が嫌。
自由がなくなりそう。
今ですら城に瓶詰め状態で息がつまりそうだって言うのに、夫ができたらそれに拍車がかかるのでは?
母を見ていると思うのだ。
何をするにも父の元から離れず、いつも彼の隣に凛として立っている。
立場としては女王に当たるので、公務というものも少なくない。
それをこなしつつもラブラブラブラブと。
………………両親が異常なのかもしれないが。
とにかく、自由な時間がないように見えるのだ。
私はまだ嫌。
これ以上の幸せも、愛情もいらない。
贅沢だと言われるかもしれないけれど、私は今があればそれでいいだけ。
……………何がいけないの?
上体を起こして、脚を抱く。
なんでよ。
お父様もお母様も、私の気持ちなんてどうでもいいの?
それとも、本当に断ってもいいの?
2人の気持ちがわからない。
はぁ、とため息をつくと、ドアがノックされた。
返事をすると、マーガレットが入ってきた。
「会合が終了いたしまして……王様が、エル様に王子様方を部屋に案内させるように、とのことです」
「……………………はぁ」
マギーを使うという事は、絶対にしろ、と暗に告げている。
気乗りしないながらも、案内するだけ、と自分に言い聞かせて部屋を出た。
マギーは部屋に入ってため息を付いていたから、おそらく脱ぎ捨てたドレスなどを方付けるのだろう。
………………いつもすみません。
今度からは脱いだらまず片付けようと心に決めて、会合室へ向かった。