会合が終わり、国王と后であるシンデレラは先に会場を出て、自室に戻る。
自室の扉を閉めた途端、シンデレラは夫に詰め寄った。
「あなた、よかったのですか?あんな挑発的なことを言って」
シンデレラは心配なのだ。
娘が望まぬ結婚をすること。
「私はこの婚約の話しも反対だったのです」
夫が取引として持ってきた時は気が知れなかった。
彼の考えを聞くまでは。
『王女というものは、もっぱら外には出れない。ならば相手から来てもらえばいいではないか』
相手を気に入らなければ振ってもいい。
シンデレラがエルネスタに告げたことは本当だ。
だが、シンデレラは心配が消えなかった。
「いい。あれくらい焚き付けておかないと、年頃の男は動かないかも知れないだろう?」
何を言うか。
シンデレラは、呆れてため息を付いた。
約20年前、舞踏会で初めてあった女性に熱し、靴片方だけで見つけ出した男性の言葉とは思えない。
確か、三兄弟の一番上が、あの時の彼と同じくらいの年だったはず。
「………シンディ、こちらへおいで」
愛する人に呼ばれて、シンデレラはしずしずと彼に近寄った。
近づいたシンデレラの手をとると、その目を真っ直ぐに見た彼は、言い聞かせる様に笑った。
「大丈夫、エルネスタは幸せになるよ。なってったって、君の子なんだからね。たとえ、もし何かあっても、僕が君とエルを守るから」
その言葉に、シンデレラは少なからず安堵したのであった。