『わぁ!見てみて、王子様!』
『わぁわぁ!!すごいね!すごい!!』
『うん!!イケメンさんだぁ!!』
小鳥たちの声が楽しげに響く。
そんな中で、私は動けずにいた。
前に出た3人の王子は、みんなそれぞれ綺麗な顔をしていた。
イケメンとしか言えないというか。
はわぁ……。
と、少しだけときめいていると。
3人の男性が音も無くひざまずいた。
「第一王子のヴィンセントと申します。……お目にかかれて光栄です、エルネスタ王女」
そして一番右、私に一番近いところにいる男性がそう名乗った。
綺麗な銀色の髪はサラサラと長く、首の後ろで一つにくくっていた。
深い青色の瞳は、私を写して優しげに微笑んでいた。
私が頭を下げると、その隣の男性が顔を上げた。
「エルネスタ王女……第二王子のギルバートです。なんとお美しい方か。噂には聞いていたのですが、これほどとは……」
「えっと、あの…………………」
突然美しいと言われて少し戸惑ってしまう。
いや、何故ってさ、彼の方が美しいのではと思えて。
ヴィンセントに似ているが、彼からは色気というか、そういった物が強く出ている。
ヴィンセントは色気をうまく隠しているのに対し、ギルバートは隠そうともしていないというか。
黒に近い茶髪は少しウェーブして、後ろでくくられている。
青い瞳は、ヴィンセントのものより少し明るい。
その目に見つめられると、少しだけ胸が高なった。
「第三王子のアルバートです!エルネスタ王女はとっても美人なんですね!」
これまた元気にそう言ってくれるのは、ギルバートの隣にいる、2人より少し小柄な男性。
男性というよりはまだ少年というか……。
「僕だけ王女より年下なのですが…お嫌ですか?」
私の戸惑いを感じ取ったのか、少し哀しそうな蒼い瞳で見つめられた。
「えっ、いや、そんな…」
まて、お嫌って何がだ。
何について?
結婚とか恋人がってことならば………うーん。
歳にもよるが、年下年上とかあまり興味はない。
離れすぎてなければ問題ない……と、思う。
私の答えに、花が咲いたように笑った彼、アルバートは、金色の髪を首元まで伸ばしていたものの、それをくくってはいなかった。
「嬉しいです!よろしくお願いしますね!」
ニコニコと笑う彼に、可愛いと、少しだけときめいてしまった。
『んー。私はギルバート様がいいなぁ。あぁいう女性慣れしてる感じのほうが、エル様を引っ張ってくれそうでしょ?』
『えぇ!?ダメよだめ!浮気されたらどうするの!?やっぱり、エル様にはヴィンセント様がいいんじゃないかな?ザ、王子様って感じで!』
『エル様はきっとアルバート様みたいな可愛らしい方が好みだと思うなぁ。2人で和やかに家庭を作るの!!』
窓の外で小鳥たちが私に合う合わないと議論をしてくれている。
うん、私を思ってくれるのは嬉しいのだけれどね。
恥ずかしいからやめて欲しいな………。
私は無意識に赤くなった顔を、3人から逸らした。
「…では、これから1ヶ月の間、3人にはここに滞在していただきます。そしてその間で、娘の心を掴むことができたら、その方に娘の婚約者になって頂きます」
「………え?」
なに、1ヶ月?
顔見せだけじゃなかったの!?
会うだけって言ったじゃない!!
ばっとお母様に顔を向けると、彼女はごめんね、というように手を合わせて方目をつむった。
こんの馬鹿夫婦……!!!
そっと王子達に視線を向ける。
彼らは、それぞれ何らかの意思を持って私を見つめていた。
………………勘弁してよ……。
あったばかりの男性、それも無駄にイケメンな彼ら3人と1ヶ月。
ストレスで死んじゃう。
いくらイケメンでも結婚ってなると別なんだって!!
私は、頭痛を感じながら、こっそり自分の両手を握った。
窓の外では、これからを楽しみそうに眺める小鳥たちが飛び立って言った。
『みんなに知らせなくちゃ!!』
エルネスタは、何か恐ろしいことが始まる気がしていた。


